「自分だけの香り」は
お守りのように心を支えてくれる。

はじめましてPACEです Vol.06

201LAB(ニーマルイチラボ) 代表・髙木哲さん

事業開発室 室長・濱中保通さん

ルクア イーレ4階に新たにできるエリア「PACE(ペース)」。そこに出店する201LABは、「すきな香りをすきなだけ」「めぐる・であう」をコンセプトにしたフレグランスショップ。香りを選ぶ体験から提供し、自分だけの特別感のある香りが見つけられると好評です。取材で京都のオフィスを訪れると、ずらりと並んだフレグランスの数々。実際に香りを体験させていただきながら「PACE」での展開について話し合いました。技術力を生かした新しい発想の数々に、ルクアチームもワクワクが止まりません!

取材場所となったのは、京都にある「ART LAB.(アート・ラボ)」本社。
最寄りの京阪の四宮駅で電車を降りると山々に囲まれた、どこか懐かしい落ち着いた街並み。
駅から徒歩数分ほどで到着。会議はいつもルクアのオフィスで行っていたため、岡森・寅屋敷ともに本社へ訪れるのは初めて。
窓からは、雄大な山々が。「ここは京都のなかでも比較的落ち着いたところで、ものづくりに専念するには向いているんですよ」と、出迎えてくださったのは、
201LABを運営する、株式会社アート・ラボ 代表取締役・髙木哲さんと、
事業開発室 室長・濱中保通さん。

ルクア岡森:こうやって開発された商品がずらりと並んでいるなかでお話ができるのもありがたいです。

髙木:ぜひ、いろいろと手に取って香りの違いを実際に体験してみてください。

香りにつられて寅屋敷が思わず手に取ったのは、「L.A.B(エルエービー)」シリーズの「Gentle rain」。ぽつぽつと静かに降り注ぐ雨をイメージした香りだそう。しばし商品を見せていただいたあと……

ルクア岡森:ではそろそろ今回の取材の趣旨を。ルクア イーレ4階に新たにできる「PACE」という空間で、201LABさんがどのようなお店を作っていくか、私たちも一緒に考えていきたいと思い、この場を設けさせていただきました。

「『PACE』では、ただものを買う場所ではなく、そのものが生まれた背景や価値をしっかり伝えることで、お客様が納得感をもって購入できる場所にしたい」という思いを伝えると……
「我が社の『モノから心へ、心からものへ』という事業テーマと通ずるものがありますね」と髙木さん。

40種類以上の香りの中から、“自分の好き”を見つける楽しさを。

ルクア岡森:「PACE」では、ものを通して何かを感じる、知る、考えるという体験を含めて提供したいと考えています。201LABさんは「PACE」でどのような展開をお考えですか? 体験型の店舗になる、というのはお聞きしていますが……。

髙木:ルームフレグランスの量り売りをベースにしたいと考えています。基礎となる40種類ほどの香りを用意して、お客様自身で「自分の好き」を探してもらいます。店内スタッフがお手伝いをするので安心してくださいね。さらに、使いたい場所や季節によって香りを変えたいというような様々なご要望をお伺いし、必要なオイルの量をご提案します。何よりも自分の「本当に好きな香りは何か」を考える時間をつくれたらと思っています。

「自由に店内を歩きながら、じっくりと悩んでいただける仕組みになっています。まずお客様にトレイを渡して、ムエットという香りをつける紙を取ってもらい、気になる香りをつけて……、
こう嗅ぎながら、ご自身の好きな香りを見つけていくんです」と、
実演しながら説明してくれる髙木さん。

ルクア岡森選ぶこと自体が楽しみというか、一種のアトラクションみたいな感じですよね。でも体験して終わりじゃない。持ち帰り、家での時間を充実させることにつながっていく。毎日がちょっと豊かになるというか、QOLが上がった! と実感できるのが良いですよね。

髙木:香りというのは、日々の生活のなかで取り入れやすいものだと思っています。「仕事に疲れて家で癒やされたいときの香り」とか「朝からシャキッとやる気になりたいときの香り」なんて風に使い分けて、心をコントロールするのに一役買ってくれる。そういう意味で「自分が本当に好きな香り」を知っておくのはすごく価値があるんです。

濱中:ありがたいことに、リピーター率が70%以上で。たくさんの選択肢の中から選んでいただいた特別な香りなので、日々の生活に欠かせないものとなっているのかなと思います。

フレグランスオイルは専用のマイボトルに入れてお渡し。次回以降の来店時に持ってくることで、リフィルとして中のオイルを詰め替え購入できる。量り売りのため、試しに少量から購入することも、別の容器に小分けして様々な場所で使うために沢山の量を購入することも可能。「無理・無駄なく香りある生活を続けてもらいたい」と髙木さん。

ルクア岡森:サスティナブルな暮らしに関心が高まっている今、“容器をまるごと捨てる”罪悪感をとってくださるのはありがたいです。

髙木:あとは今回コンシェルジュカウンターというのも用意しています。うちの調香師がお客様とマンツーマンで話をして、樹脂のフレグラントでできたピアスを選んでいただいたり、そこにどんな香りを入れるかを相談できる場所にしたいと考えていて。

こちらは香料の入った特殊な樹脂を紫外線に当てることで固めて作ったアクセサリー。
この樹脂はアート・ラボの独自開発。

髙木:このピアスですと、3年間香りが継続します。香りは消えて無くなってしまうものという課題があったのですが、固形の中に閉じ込めることで長く使っていただけるのが魅力ですね。

ルクア岡森:肌が弱い方にとってもこういうかたちで香りを身に纏えるのはうれしいですね。

こちらのカードも同じ樹脂でできていて、名刺ケースに入れておくと、名刺に香りがついてくるようになっている。

ルクア岡森:なるほど、香りでも自己紹介するというイメージですかね。「この人はこんな香り」というように記憶してもらえるのも面白いです。201LABさんは香りという分野をいろんな面から捉えて、新しいものを生み出していらっしゃいますよね。

髙木:最近だと、フレンチのシェフがお皿のリムのところに仕上げとして、シュッと香りをスプレーでできるような製品を開発しているところですね。これを生かして「PACE」内で飲食をされるお店とコラボできればおもしろそうだなと思っているんです。

ルクア岡森:パフェテリアの「ラルゴ」さんはワクワク感を大事にされているので、パフェの提供をお待ちいただいている間に、注文したパフェとセットの香りを楽しんでもらう、とかできると、待ち時間も楽しめそうです。

今では一般的に使われている、瓶に棒を挿して香りを楽しむ「リードディフューザー」は、国内でまだ一般的に認知される前からアート・ラボが商品化して販売をしていた。香りを身近なものにするまでの背景や、それを実現するまでの歴史が垣間見える。

香りづくりは“情景をイメージすること”が大事なんです。

「あとはフレグランスアカデミーという教室を秋から開講予定で……」と、何やら道具を取り出す髙木さん。

髙木:アカデミーは、ただものを売るのではなく、「知ること、伝えること」の価値を創造したいという思いで始まった試みなんです。「PACE」の新店舗でもやっていきたいと考えています。

ルクア岡森:具体的にはどのような内容なのでしょうか?

「『香りは見てとれる』というテーマで、こちらのカラーパレットを見ながら、
体系的にチャート化して組み合わせを勉強していきます。
さまざまな香りは樹脂のビーズに閉じ込められた状態で配合していき、
失敗しても、香りに対応した色がついているので
やり直しが簡単なんです」
髙木さんの説明を受け「初心者でも取り組みやすい!」と一同感心。

濱中:本格的に香りの勉強をしていただいた方は、将来的に調香師として活躍していただくこともできますよ。

ルクア岡森:この箱入りの調香セットがすごくかわいくて、俄然やる気になりそうです(笑)。実験をするような雰囲気ですね。

お道具箱のような可愛らしい箱に、キュン。
こちらは数種類の柄から自分のお気に入りを選ぶことができるそう。

濱中:まさにそういう見た目の動機付けも大事な要素だと考えていて。京都の貼箱専門店「BOX&NEEDLE」さんに箱を作っていただきました。

ルクア岡森:ところで、香りをつくる上でのコツみたいなものってあるのでしょうか?

髙木:香りのイメージでいうと“バラ”とか“レモン”とか、具体的で頭のなかで再現しやすいモノを思い浮かべる方が多いのですが、私たち調香師は、風景や音楽、言葉などから連想されるイメージをふくらませ、香りにつなげていくんです。

展開中の「cotoiro」京の情景シリーズ。
京都の「貴船の聖水」や「嵯峨の竹林」といった繊細なイメージを香りで表現している。

髙木:たとえば、私たちが商品を作るときに「水の香りを作ってください」というオーダーがあると、「どこの水ですか」と聞くんです。イメージをしっかりふくらますことができてこそ、香りにつなげることができる。アカデミーではそういう方法について細かく教えていきます。

ルクア岡森:情景を切り取って香りに落とし込む勉強をしていくと、目に入ってくるものや音楽、言葉など、日々いろんなものに接するときの感度が上がりそうですね。

「生徒さんが作った香りですごく良いものができたときは、商品化して店舗で実際に販売したい」「商品名も生徒さんに決めてもらって」と、構想を語るお二人。

ルクア岡森:自分が作った香りを別のお客様が気に入って買ってくださるのはすごく嬉しいですね! 生徒さんのモチベーションにもつながりそうです。

ここで、寅屋敷があるものを発見。「こちらのキットはなんですか?」

濱中:アロマシューターというものです。タブレットで香りの割合をそれぞれ入力すると、ブレンドしたときの香りがシュッと出て体験できる機材ですが、まだ研究中です。

「この仕組みを使って、花束の代わりに、遠くの人に香りを贈ることもできるのではと考えています」と髙木さん。

髙木:ただ、こちらはお値段が高価なのと大量生産出来ないため、一般販売するにはまだ課題が残されているんですけどね……(笑)。

ルクア岡森:でも、自分が作った香りを遠隔でプレゼントするなんて、なんとも夢のある話ですね。

髙木:香りって、ネットで買うのはなかなか難易度が高いでしょう。逆に言えば、“実際にかげる”ことに価値があるものだと思うんです。なので、このキットにしろ、「PACE」での量り売りやフレグランスアカデミーにしろ、体験するというエンタメ性を楽しんでほしいなと思っています。

最後に岡森から髙木さんに対し、「ご自身のペースを保つ秘訣は?」というお決まりの質問。
「スワヒリ語で“ゆっくり”を意味する“ポレポレ”という言葉を常に心に置くこと。以前アフリカで、現地の方は急ぐことがなく、走ってる人がいないというお話を聞いて。忙しくても、精神的にはゆとりをもっていたいですね」
たくさんのアイデアと技術力を体感し、刺激を受けた岡森と寅屋敷。
「PACE」の可能性が広がったと感謝を述べ、髙木さん、濱中さんに見送られながらオフィスをあとにした。

ルクア大阪・寅屋敷のインタビュー後記:
「香りをビジュアル化する」という驚きの技術に、取材スタッフ全員が釘付けのインタビューでした。インタビューの中でも話されていた髙木社長が大切にされている「ポレポレ(スワヒリ語で“ゆっくり”という意味)」という言葉がとっても印象的で、柔らかいお人柄にすっかりファンになってしまいました。ルクア大阪店では「テーマパークのアトラクションのようなお店にしたい」とのことで、お店の設計段階から楽しんでもらうための“こだわり”が随所に見られました!ルームフレグランスのアトラクションショップってすごく気になりませんか? オープンがとても楽しみです。

Edit:Hasegawa Mayu
Photo:Watanabe Yoshiko
Text:Hirata Yufuko
Edit Support:Minami Ayumi・Kubota Leia

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