「トレンド」でも「消費制限」でもない、
エシカル・サスティナブルとの向き合い方。
はじめましてPACEです Vol.01
style table 代表・吹上直子さん
代官山に本店を構える「style table(以下、スタイルテーブル)」は、エシカル、サスティナブル、ヴィーガンの3つのコンセプトを掲げて、コスメや雑貨、フードなどを扱うセレクトショップです。このたび、ルクア イーレ4Fにオープンした新エリア「PACE」への出店をもって初の関西進出を果たします。トレンドの文脈で語られたり、どこか“意識の高い”イメージを抱かれがちなエシカルやサステナブルという言葉…。代表の吹上直子さんは、この現状に違和感を覚えると語ります。「PACE」プロジェクトの担当者である岡森と寅屋敷がその想いに向き合い、新店の構想を伺ってきました。
ルクア岡森:さっそくですが、今回ご出店いただく「PACE」という空間について、一緒にどういったことができるかをご相談したいです。まずは、改めて吹上さんがスタイルテーブルに込める想いについて聞かせてください。
吹上:分かりました、よろしくお願いします!
かわいいから、楽だから。
それが本当の意味での持続性につながる。
ルクア岡森:スタイルテーブルさんは、エシカルやサスティナブル、ヴィーガンをテーマにしたコスメやフード、雑貨などを取り扱っていますが、どういった基準で商品をセレクトされていますか?
吹上:できるだけ地球環境に負担のないものを選び、使うことがただの消費ではなく、使うことで地球や人、未来の社会に優しくなれるものを選んでいます。そのため、ルクアさんが掲げる「モノが主役の場から人が主役の場へ」という想いにも共感します。
ルクア岡森:以前読んだ本に、私たちは1週間にクレジットカード1枚分ものマイクロプラスチックを飲み込んでいると書かれていました。その危機感は理解しつつも、なかなか普段の行動を変えるのは難しいですね…。
吹上:環境に良いことや身体に良いことは大切なのですが、それだけで多くの人が日々の行動を変えていくのは難しいと思います。見た目がかわいい、食べておいしい、生活が楽になるなど、何気ない前向きな動機が重要ですよね。結果的に、エシカル・サスティナブルな生活を送っているというのが、本当の意味での持続性に繋がると考えています。
ルクア岡森:最近ではエシカル消費やサスティナブルな社会が話題にあがることも多いですが、一方でトレンドで終わってしまう危機感も感じます。
吹上:本来は、トレンドではなく当たり前であるはずなんです。エシカル・サスティナブルといった大きな主語だけで語ってしまうと継続に至らないと思います。その商品を買ったり使ったりすることによって、具体的に何が良いポイントなのか、社会や自分自身にどう貢献できるのかを正確に伝えていく必要があると思うんです。そうでなければ、“何となく”で終わってしまうんじゃないでしょうか。
ルクア岡森:その一環なのだと思いますが、スタイルテーブルさんは商品に対して「ジャパンメイド」「オーガニック成分配合」「気候変動対応」「プラスチックフリー」「ヴィーガン」「フェアトレード」「天然由来成分配合」の7つのテーマを一目でわかりやすく表示されていますね。
吹上:最近はエシカル風やサスティナブル風ではありながらも本質的でない商品もあります。フェアトレード表記を謳いながらも売上金の行き先が明確でない商品も出回っていたり。メーカーや生産者とお客様の間に立つ私たちが、そこを見間違えていてはエシカル消費を推進できないですよね。正しい情報をお伝えする場としてスタイルテーブルがあればなと。
ルクア岡森:どのように正しい情報を見極めていますか?
吹上:メーカーや生産者はもちろん、認証機関である第三者の方を招いて勉強会を開いています。お店に並べるものはすべて試し、私たちが本当に良いと感じた商品だけを選んでいますね。そこで得た知見をお客様に届け、“誤解”もときほぐしていきたい。
ルクア岡森:“誤解”ですか?
吹上:例えば、オーガニックコスメと聞くと、海外商品の方が品揃えが多く、高品質なイメージをもたれる方が多いのが現状だと思います。しかし、それはジャパンメイドのオーガニックコスメが、どのような経緯で出来上がっているのかがあまり知られていないからこそ生まれている“誤解”だと思うんです。日本には世界で最も厳しいと言われる審査基準を定めているオーガニックの協会や認証もあり、実は国産品でも優れたものが多い。
ルクア岡森:正しい情報を得るより先に、イメージだけが先行していると…。
メーカーや生産者の声を代弁する場をつくりたい。
吹上:私たちの店では食品も扱っているのですが、最近は、市場に出ることの叶わなかった規格外の野菜を応援する「FARM CANNING(ファームキャニング)」さんのバーニャカウダが人気なんです。これも、旧来の価値観のままだと、私たち日本人が見過ごしていたものですよね。
ルクア岡森:日本の食品廃棄量は、アジアでワーストワンとも言われていますね。
吹上:形が不揃いでも、美味しいんですよ(笑)。このバーニャカウダは、野菜にディップしてもよし、軽く焼いたバケットに乗せたり、パスタに和えるのもおすすめです。生産者さんのスローガンは“もったいない”です。その言葉とともに届けたいですね。
ルクア岡森:もったいないって、改めていい言葉ですね。それは野菜を捨てていることだけじゃなく、美味しいものに気づけなかったことにも言えるのかなと思いました。店頭での短い接客時間だけでは、なかなか伝えられないことですが、メーカーや生産者の想いって、その商品の魅力そのものであり、大切な情報ですね。
吹上:そうなんです。どんな背景や想いから生まれたものなのか、私たちがメーカーや生産者の声を代弁して、お客様に届けていくことが大切だと考えています。たとえば「工房ふじや」さんというドライフルーツのメーカーがあるんですが、とにかくフルーツの歯ごたえに強いこだわりをもっていらっしゃって。社長さん自らがキウイフルーツの皮に生えた毛の一つひとつをピンセットで抜いていらっしゃるんです。
ルクア岡森:まさかの手作業。並々ならぬこだわりですね……! そんなお話をお伺いするとぜひ一度食べてみたくなりますし、一つひとつを大切に味わおうと思います!
吹上:皆さんの想いや日常を知ると、並んでいる商品の見え方も変わりますよね。キウイのドライフルーツに関しては、あまりに売れてしまうと社長さんの手が追いつかなくなってしまうかもしれませんが(笑)。
ルクア岡森:魅力的な商品であっても少量生産の場合、需要と供給のバランスは難しいテーマですね。
吹上:家族経営の小さなメーカーの場合、生産量が一定でない場合も多いです。そういった小さなメーカーの生産量の不安定さを許容できる社会であれば、より良いなということも強く感じています。やはり生産者がこだわりを持ちながらそれぞれの“ペース”で作るものは、お客様にとっても良い商品だと思います。良い商品をやたらに消費するのでなく、こちらもゆったりと待つことを楽しみにしたいですよね。
ルクア岡森:私たちルクアのもとにも関西の小さなメーカーや生産者の方から、とても魅力的な商品のご提案を受けることもあるのですが、生産量の規模からお断りするケースもありました。今回の「PACE」では、スタイルテーブルさんのお力をお借りして、地元のメーカーや生産者ともコラボレーションができれば素敵ですね。
吹上:エシカル消費を応援する私たちとしては「地産地消」は重要なテーマです。関西での出店を機に、ぜひ地元メーカーの商品を取り扱いたいですね。現在も、渋谷スクランブルスクエア店では、店舗の一部を期間限定でメーカーや生産者に貸し出して商品販売をしています。「PACE」でも、ゆくゆくはそういったコーナーを設けるのも面白いかもしれません。そうすることによって、メーカーや生産者の想いが、直接お客様へ届けられる機会が生まれるのではないかと思います。
ルクア岡森:ぜひ「PACE」でもお願いします!
ルクア大阪・寅屋敷のインタビュー後記:
吹上さんの「本当にいいものを届けたい」という思いが伝わってきたインタビューでした。インタビューでは、起業するまでのエピソードや社長と育児の両立のお話など、大変そうなお話もありましたが、終始すごく楽しそうにお話されていたのが印象的でした。
スタイルテーブルでは、お店の中にワークショップスペースがあり色々な体験ができるようです。私も、まずはマイボトルを買うことから始めてみようと思います。